■5番目の下宿■

81 The Chase, Clapham Common Miss Leale方
滞在期間 1901年7月20日〜1902年12月5日


 『午前Miss Leale方ニ引越シス 大騒動ナリ 四時頃書籍大革来ル 箱大ニシテ門ニ入ラズ 門前ニテ書籍ヲ出ス 夫ヲ三階ヘ上ル 非常ナ手数ナリ 暑気堪難シ 発汗一斗許リ 室内乱雑膝ヲ容ルル能ハズ』
 (7月20日の日記より)


 昨宵は夜中(よじゅう)枕の上で、ばちばち云う響を聞いた。これは近所にクラパム・ジャンクションと云う大停車場のある御蔭である。このジャンクションには一日のうちに、汽車が千いくつか集まってくる。それを細かに割りつけて見ると、一分に一(ひ)と列車ぐらいずつ出入をする訳になる。
 (『永日小品』「霧」より)



【アクセス】
@地下鉄Northern lineのClapham Common駅(Zone2)下車。
A駅を出て左折すると、すぐにClapham Common(公園)につき当ります。上のGoogle Mapを参考に、The Chase通りを目指します。公園の中を通るのが不安でしたら大通りを通ってもOKですが、Clapham Commonは見通しのよい公園なので、公園に入ってしまってもThe Chaseは割と簡単に見つかります。
Bあとはひたすら真っすぐThe Chaseを北上。500mほど進むと、左手にThe Chase 81番地があります。ここまで、駅から徒歩20分くらい。

※漱石の言う「クラパム・ジャンクション」とは、overgroundのClapham Junction駅のこと。
※Google Map→「81 The Chase, london




Clapham Common(公園)の入口付近

Clapham Common
左記の入口付近から左手を見ると、こんな感じ。
漱石はここで自転車の練習をしました。


「どこへ行って乗ろう」「どこだって今日初めて乗るのだからなるたけ人の通らない道の悪くない落ちても人の笑わないようなところに願いたい」と降参人ながらいろいろな条件を提出する。仁恵なる監督官は余が衷情を憐んで「クラパム・コンモン」の傍人跡あまり繁からざる大道の横手馬乗場へと余を拉し去る。しかして後「さあここで乗って見たまえ」という。いよいよ降参人の降参人たる本領を発揮せざるを得ざるに至った。ああ悲夫。
(『自転車日記』より)

The Chaseの道路標識
SW4とはSouth West 4、つまりロンドン南西部を意味しています。

The Chase通り
Clapham Commonでは沢山の人が日向ぼっこしていましたが、この通りには人っこ一人おらず、ちょっと寂しかったです。
その分タイムスリップ気分には浸り放題でしたが…。

The Chaseの美しい街並み

The Chase
右に見える赤いポストは、漱石が日本に送る手紙を投函していたと言われるポスト。
漱石記念館の方は「坊っちゃんポスト」と呼んでいました。

坊っちゃんポスト
ヴィクトリア朝時代のものであることを示す「V」のマークが入っています。
これほど古いポストは、ロンドンでも稀少とのこと。
色も形も素敵です。

The Chaseを北上して左手、二つあるうちの左のドアがThe Chase 81番地。
漱石の部屋は、この最上階(日本でいう3階、イギリスでいう2階)にありました。
現在屋根の上に飛び出ているサンルームのような部分は、後に作られたもの。

壁に埋め込まれたブループラーク(かつて著名人が住んでいたことを示す青い銘板)
ロンドンにある漱石の5つの下宿のうち、唯一のブループラークです。

倫敦漱石記念館
漱石の下宿の真向かい、80b The Chaseにあります。
右の薄緑色のドアが入口。
入るときにインターフォンを鳴らす必要があるので少し緊張しますが、応答は日本語でした^^

※追記:このThe Chaseの倫敦漱石記念館は2016年に閉館し、現在は館長の恒松郁生さんがロンドン郊外のサリー州にあるご自宅の一部を改装して再オープンしています。


倫敦漱石散歩