■1番目の下宿(宿)■

76, Gower Street, W

滞在期間 1900年10月28日〜1900年11月11日


 『小生只今の宿所は日本人の下宿する所にて、76, Gower Street, London に候 ここは宿屋より遥かに安直なれども一日に部屋食料等にて六シ許を要し候 到底留学費を丸で費ても足らぬ故早くきり上がる積に候』
 (明治33年10月30日 妻鏡子へ宛てた手紙より)


 表へ出ると、広い通りが真直に家の前を貫いている。試みにその中央に立って見廻して見たら、眼に入る家はことごとく四階で、またことごとく同じ色であった。隣も向うも区別のつきかねるくらい似寄った構造なので、今自分が出て来たのははたしてどの家であるか、二三間行過ぎて、後戻りをすると、もう分らない。不思議な町である。
 (『永日小品』「印象」より)


【アクセス】
地下鉄Bakerloo lineのEuston Square駅、Picadilly lineのRussell Square駅、Northern lineのGoodge Street駅(全てZone1)の、いずれからも徒歩10分以内。
市の中心部で大英博物館からも近いので、漱石ファンがロンドン観光のついでに訪れるとしたら、5つの下宿の中でここが一番行きやすい。
場所はガイドブックの地図で簡単に調べることができるため、詳しい道順は省略させていただきます。
下のGoogle Mapをご参考くださいませ^^

※Google Map→「76 Gower Street, london



Gower Streetの標示。
ロンドンは大抵の道にこのように通り名が表示されています。
そして大抵の家のドアには番地名が表示されているので、初めての場所へも迷わず行くことができ非常に便利。

Gower Street付近の景色。
コンクリート建築物に囲まれた現代日本に生きる私は単純に「オモチャの家みたいで可愛いな〜〜」と思ってしまいますが、ロンドンに着いたばかりの漱石は「同じような建物ばかりが並び、区別がつかず、無機質」というようなことを言っています。
明治の日本から来た、情感豊かな漱石には、たしかにそう見えただろうなあ。


Gower Streetを南から望む。
右側一番手前の青いドアが、Gower Street 76番地です。
右奥の赤煉瓦の建物は、大型書店のWaterstones。

左のドアが78番地、右のドアが76番地です。
(漱石記念館のホームページでは78番地の写真が漱石の下宿先として載っていますが、何故なのでしょう…?)
ここは当時、今でいうB&Bのようなものでしたが、家賃が高すぎたため漱石は2週間程で引き払いました。

76番地から、向かい側(77、79番地)を望む。
ロンドンの家は、通りを挟んで交互に番地付けされています。
渡英したばかりの漱石も、窓からこの景色を眺めたんでしょうね。

Torrington Place通りから見たWaterstonesの正面(右側の道がGower Street)。
ロンドンの書店って、どうしてこんなに素敵なのでしょう。書店がというより建物が素敵なのだけど。



倫敦漱石散歩