二学期の初日を終えた深夜の六年長屋。
 その一室で、いわゆる恋バナに花を咲かせる忍たまが二名。

 多紀平太と高久明秀である。



 「つまり、ひとつ屋根の下で二人っきりで一夜を共にしたにもかかわらず、何もできなかった、と」

 「………」


 昼間の半助と平太の様子から敏感に何かを察知した明秀は、風呂上がりの平太をつかまえ、開口一番に「休みの間に何があった?さあ吐け」と言った。
 さすが伊達に遊んでないな…と感心しつつも白を切った平太だったが、口で明秀に勝てたことのない彼は、日付が変わる頃にはすべてを白状させられたのだった。


 「情けないな」

 「…っそう簡単に言うけどな。相手は教師だぜ?手裏剣だぞ?どうやれっていうんだよ」

 「そんなのはどうとでもなるさ。誰も力づくでやれなんて言ってない。要は半助ちゃんをその気にさせればいいだけだろ?」

 「……う……」

 「だから情けないって言ったのさ。結構女遊びしてたくせに、それくらいもできないとはな」

 お前は好奇心だけで遊んでるからそういうことになるんだよ、と明秀は平太の額を指ではじいた。

 「ちゃんと経験から学べよな」

 平太は言い返す言葉が見つからず、はじかれた額を片手で押さえて黙りこむ。

 「というわけで。教えてやろうか?」

 明秀がにやりと笑う。

 「なにを?」

 「この間の続き。あの時はまだ半助ちゃんとこうなる前だったろ?こういうことになったわけだし、やっぱり本番前に経験しておいたほうがいいぜー。半助ちゃんのこと、傷つけたくないだろ?」

 冗談七分、本気三分で明秀は言ってみた。
 どちらにしろ平太をからかうのは面白い。


 と。


 「え、遠慮しとく、、、」

 平太がひきつった顔で、じり…と後ずさった。

 特に避けていたわけではなかったが、あの夜のことが二人の間で話題に上がるのはあれ以来初めてのことだった。
 あのときの明秀との行為をまざまざと思い出し、平太の顔に薄らと赤みが差す。


 「……………。ひとつ聞いていいか、平太」

 「…な、なんだよ」

 「お前、誘ってる?」

 「誘っ…、んなわけねーだろ!!!」

 「本気で?本気で誘ってないんだな?」

 真剣な顔で確認するように言い重ねる明秀に、平太は怒鳴った。

 「ったり前だ!!頭腐ってんのか!?」

 「………」

 明秀はしばらく何かを考え込むように黙ってから、ぽそりと言った。

 「お前……、半助ちゃんに抱かれちゃわないように気をつけろよ…」

 「…はぁ?何わけのわかんないこと言ってんだよ。俺が抱かれるわけないだろ?」

 頭おかしくなったんじゃねーのこいつ、という目で見られ、明秀は珍しく、はぁ…と溜息をついた。

 「………だといいけどな」

 



 こういうときにこの親友が見せる独特の表情。
 美少女と評判の自分の恋人以上ではないかと思わせるそれ――。

 (絶対に半助ちゃんも俺と同じように思ってるはずだぜ…)

 自分のことがまるでわかっていない親友の未来が思いやられ、明秀はひそかに天を仰いだ。










攻受どちらにも格好よさ+可愛さ+色っぽさを希望。
男前度も半助>平太を希望。
でもリバはありませんので、ご安心を(笑)


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